2008年 12月 18日
「ストリートビューというサービス開始の日 ー爆発的に増殖する深刻な問題を見つめて」(31) 北口学 奈良県の三郷町議会が17日に可決した政府に対する意見書が奈良県の自治体関係者などで運営されている啓発連絡協議会から届きました。町田市・生駒市・茨木市など、それぞれの自治体の熱意が伝わり、それでいて個性的で錬りに錬った文案に個性が顕れていると思えます。三郷町の意見書は下記に転載しておきます。 茨木市や三郷町が力点を置いて言及している部分はPCやネットに接続する環境のない人々に対する広報の要望です。これは「グーグル社」が当然行なうべきことなのですが、まったくの配慮もせず、ネット以外での現在の彼らの行なっているサービスの実像や削除等の方法を積極的に広報していない「グーグル社」に対する怒りの言葉に私は読めます。 インターネット上で無許可で撮影し、公開されている多くの市民が存在します。PCやネットユーザーにはグーグル社は、このストリート・ビュー・サービスを誇らしく喧伝しています。PCでの削除依頼ができない人々に対してグーグル社「電話での削除依頼には答えている」と、ネット・ニュース上でのコメントはしているものの、その電話番号はネットを使い慣れた人間にもなかなか見つけられないほど「グーグル社」のホームページ上では目立たない記述のありさまです。 そして、東京にある受付電話番号は代表電話のままで、担当に回されすべての電話料金もプライバシーを侵害された人々など削除要請を余儀なくされた市民の負担となっているままです。なんと横柄な対応なのかと強く思います。そして、多くの市民のプライバシーや人権の問題と地方自治体や中央省庁からの問い合わせなどを行なう電話料金は私達の税金が遣われ続けているのです。多様な職務をこなして多忙な自治体職員の人々の貴重な時間とエネルギーとともに。 受付電話の窓口の改善、フリーダイヤルの設置などは、たしか現在社長となっている人物がインターネットニュースのインタビュー報道で「改善を検討する」と、アメリカからのグーグルの幹部来日記者会見の折りに報道されていた事柄ではなかったかな?米からの取締役の発言だったっけ? 必要な改善や企業としての対応を一切行なわない現在の姿勢、「グーグル・マップ」が生み出した個人情報流出問題、多くの人権侵害や差別に活用されている現状を知っている「グーグル社」が十分な対応を行なっていると思っている人間はほとんどいないと、私はこれらの意見書の文章を読んで思っています。 「グーグル日本」という会社は日本の消費者や市民が願っている対応にまったく耳を貸さず、アメリカが先導するこのサービスのデザイン改良や公開エリアの拡大にまい進しているのだと断言せざるを得ません。その姿勢に対する社会全体からの嫌悪感や反感は今後さらに増大してゆくのではないかと思えます。 近畿ローカルで放映された、毎日放送ニュース、茨木市で意見書採択を可決した日に茨木市の中村信彦市議を取材して放映したTV報道「ストリートビューに法整備を」は大きな反響を呼んでいるようです。トップ・ニュースでした。 毎日放送 6時16分からのニュース採録<>内は字幕です。 ● ● ● (女性アナ・男性アナ)こんばんは。 (女性アナ)インターネットの地図検索サイト、グーグル社のストリート・ビューサービスに地方議会から意義申し立てです。 (男性アナ)パソコンを通して世界の街並みを見ることが出来るというサイトなんですが、大阪府の茨木市議会は「犯罪に悪用される恐れがある」として、国に法整備などを求める意見書を全会一致で可決しました。 <ストリートビューに写る毎日放送本社> (男性アナ)グーグル社のストリート・ビューサービスは住所を打ち込むとその場所の画像が瞬時に映し出されます。便利な一方で撮影の際にその場に居合わせた人物も一緒に写り込むことからプライバシーの問題も指摘されていました。 <ストリートビュー 撮影時その場に居合わせた人物も写り込む> (男性アナ)実際VOICEの取材スタッフも知らないうちにこの通り <アメリカ村で取材中のスタッフも・・・> <ストリートビューに市議会が異議> <茨木市議会 「ストリートビューは画像が犯罪に利用される危険性がある」> (男性アナ)そんな中、茨木市議会はプライバシーだけではなく犯罪に悪用される危険性があるとして事業者への指導や法整備を求める意見書を全会一致で可決しました。 <意見書クローズアップ画像> <この問題に取り組む中村信彦市議> <空き巣とか犯罪の下見に使われるし> <洗濯物の画像を見て> (中村信彦茨木市議)空き巣とかですね、犯罪の下見にも使われるし、あるいは洗濯物などとかそういった画像の様子を見たりして、一人暮らしであるとか特定する、あるいはストーカーに使われる、犯罪に使われる可能性が非常に高いですね。 <犯罪に悪用される危険性が高い> (男性アナ)ストリートビューについての意見書は東京都の町田市や奈良県の生駒市でも採択されています。 <ストリートビューについての意見書は東京・町田市や奈良・生駒市でも採択> ● ● ● 少しづつ「グーグル・ストリート・ビュー」サービスの実像をPCなど全く縁の無かった人々が学習会や講演会、地方自治体の広報などで知るほどに、 「こんなに深刻でひどいサービスだとは知らなかった。」と驚きと怒りを表明する人々が着実に増加していると聞いています。 「グーグル日本」はアメリカ本国からほとんどなんの権限も持たされていないらしい・・・・グーグル社には法務担当者すら存在しないらしい・・・・多くのマスコミやジャーナリストの間ではそんな噂が半年以上も前から広く流布されています。 「新技術の発達に水を差すのは好ましくない」との技術畑の研究者・大学教員などはインターネット世界の深刻な人権侵害の現状や、法規制のないまま展開されている壮絶な日本のインターネット世界の現状をあまりご存知ないらしい・・・。おびただしい件数、しばしば発生している個人情報漏洩事件が生み出している現実の出来事や実生活への深刻な影響の数々も。 12月18日に可決される高槻市市議会の政府に対する意見書もこの場でご紹介させていただく準備をしています。 いま、早急に市民に自治体が行なわなければならないことは印刷された「広報」などと市町村の公式ホームページでグーグル・ストリート・ビュー・サービスの実像と考えられる全ての懸念をきちんと広報することだと思います。 以下、奈良県三郷町で可決された意見書です。 地域安全に関する意見書 インターネットの普及は、人々の生活に多くの利便をもたらしているが、その活用については常に人権に十分な配慮をしつつ、情報通信技術の発展について考えていかなければならない。しかし、ここ数年の間に、地図情報に併せてその実写画像を提供するサイトが複数登場している。 中でも、本年8月に日本での運用を開始した「ストリートビュー」(米グーグル社の地図検索サービス)は、地上2.5mの高さから周囲360度の風景を見渡せる無料サイトで、通行人や家並みなどが無断で撮影・公開されることにより、民家やその家庭の私物、車、敷地内の様子までもが写し出される。また、人の顔が判別できるものや車のナンバー、表札の文字が読み取れるものも少なくなく、空き巣や振り込め詐欺等の犯罪に悪用される危険性や、児童・生徒の通学路や教育施設等が公開されることによりプライバシーや人権の侵害、また防犯上の問題も数多くあげられる。 問題のある画像については利用者から申し出があれば削除に応じているが、インターネットを利用しない人など、私的な画像が世界に公開されていることを知らない人が多くいるのが現状で、一部の削除要請を受けるだけでは何ら問題の解決にはならない。 諸外国では、複数の国がグーグル社の「Street View」に懸念を表明するなどし、一部の国では観光地や大通りのみの公開にとどめるなど、居住地域への配慮がなされており、アメリカにおいてはプライバシー侵害の裁判も行われているのが現状である。 よって、住民の生活を守るためにも、国及び県の関係機関に下記のことを求める。 記 1.当該サイトについて国内の実態を調査し、被害状況等の現状把握に努めること。 2.実態を把握した上で、インターネットを利用しない国民に対しても、当該サイトに係る必要な情報を提供すること。 3.住居専用地域の公開の適否につき慎重に検討し、当該事業者に対して適切な指導を行うこと。 4.個人や自宅等を無許可で撮影し、無断で画像を公開する行為について都道府県迷惑防止条例上の迷惑行為として加える等、対策を講ずること。 5.その他、必要に応じた法整備を行うこと。 以上地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 平成20年12月17 奈良県三郷町議会 (提出先) 衆議院議長 河野洋平 様 参議院議長 江田五月 様 内閣総理大臣 麻生太郎 様 総務大臣 鳩山邦夫 様 法務大臣 森 英介 様 経済産業大臣 二階俊博 様 奈良県知事 荒井正吾 様 # by hrosaka056 | 2008-12-18 01:12 追記) 上記、米国から来日してプレス記者会見を行なったグーグル法務責任者のコメントは下記。 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0809/29/news080.html 「Google法務責任者が語る、「ストリートビュー」のプライバシー問題「既存の法規制に合わない新サービスには法的リスクが付きものだ」――米Googleの副社長で法務責任者が来日会見し、「ストリートビュー」のプライバシー問題について語った。」より転載。 IT Media News 2008年09月29日 16時29分 更新 「既存の法規制に合わない新サービスには法的リスクやクレームが付きものだが、Googleは世界中の法律や文化を尊重している」――米Google副社長で法務責任者のケント・ウォーカー氏が来日して都内で会見し、同社のプライバシー問題に関する取り組みについて語った。 (中略) ――個人的に削除依頼をしたが、対応するという通知も、削除したという通知もない。 できるだけ早く削除・通知するよう心がけているが、改善を検討したい。 ――削除依頼はネットでしか受け付けていないようだが、ネットを利用しない人についてはどう考えているのか。 知り合いのネットユーザーが代理で依頼してくれてもいいし、電話でも受け付けている。 Googleは検索サービスが人気を集めて10年で急激に大きくなった会社。より多くのサービスを展開しようと思えば、システムの多くは自動化し、オンラインサービスという形を取らざるを得ない。 ――サイト上には受け付け電話番号が載っていない。 代表番号で受け付けており、専用番号はない。改善を検討する。」 (以上、部分抜粋) ※ ※ ※ ●ストリートビュー問題 資料など 自治体可決意見書一覧(1) http://nostreet.exblog.jp/10335072/ <すぐ読んでみる> 自治体可決意見書一覧(2) http://nostreet.exblog.jp/10335103/ <すぐ読んでみる> 自治体可決意見書一覧(3) http://nostreet.exblog.jp/10398189/ <すぐ読んでみる> 40回目までの過去の連載内容の一覧 http://nostreet.exblog.jp/10564889/ <すぐ読んでみる> ※ ※ ※ この連載は「ジャーナリスト・ネット」にて連載中 http://www.journalist-net.com/ ぜひ上記「Jounalist-Net」もご訪問下さいませ♪ <ちょっと訪問してみる>
by hrosaka056
| 2008-12-18 01:12
|
アバウト
「ジャーナリストネット」連載より了解を得て転載。当URLの紹介は歓迎です。最下部「前へ」「次へ」で、過去ページ。問題資料URLが多し。「子ども権利条約16条」など重要!!
by hrosaka056 以前の記事
2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 最新のトラックバック
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||