2008年 12月 25日
「ストリートビューというサービス開始の日 ー爆発的に増殖する深刻な問題を見つめて」(37) 北口学 23日朝日新聞武蔵野版で報じられた東京都狛江市の全会一致で可決されたストリートビューについて、必要な法整備などを求める意見書をご紹介いたします。 2008年12月22日 読売新聞でグーグル社が出したコメント(この連載36に詳報)「プライバシーの侵害という指摘は真摯(しんし)に受け止める。行政と協力しながら、サービスを理解してもらえるよう努めたい」との中身を昨日、行政に問い合わせてみたところ「24日現在、一切の連絡もない。中身も発言の意味も不明だ。」と。 狛江市議のブログを見ると保守系とおぼしき議員もグーグルストリートビュー批判を個人ブログで記述しています。その内容・理由にはひっかかるところもありますが、全国の市民派・保守・革新など多様な議員さんたちが批判の思いと強い懸念をグーグル社のサービスに対して表明しているといえます。 茨木市の中村信彦市議、小林みちこ市議、高槻市の岡本茂市議会議長、野之上愛市議など、多くの議員さんのブログにも報告や意見がアップロードされています。国会議員の方のブログやHPにも意見や関連情報が散見されるようにもなってきました。各地の市議会議事録の公開も待たれます。 「インターネットを通すことによりプライバシー情報を広範に流布し、深刻な権利侵害をもたらす」との有識者らのサービス中止要請書で指摘されている問題点の理解も広がってきたと言えます。 「既存の印刷の地図、ゼンリンの地図はOKで、なぜストリートビューはダメなのか?」 との疑問もお持ちの方はまだまだ多いようです。 「コピーは配布が容易なデジタルである。差別情報の流布などに悪用されている実態もある。インターネットを通す事の恐ろしさの実像はこうですよ。」 10分ほどPCのモニターをご覧頂いて深刻な現状をお見せすると全ての人々が驚愕されます。残念なことにそれらの実例・保存画面などはネット上で紹介できないものです。人権を侵害された多くの人々も、そのつらい記述を示して世に問う事は難しいでしょう。ですから現実の深刻さはなかなか伝わり切らないもどかしさがあります。 学習会やシンポジュウムの重要性はその点でも巨大だと思います。今回の茨木市・高槻市・生駒市・三郷町・平群町などでの意見書可決という先覚的な動きと成果の背景には地道な取り組みが誠実な議員さんたちの姿とともにあったと言えます。ぜひとも全国で学習会などの開催を広げていって頂きたいと思ってしまいます。 地図というものは扱い方によっては、そして付加情報が添付された場合には深刻な人権侵害となる場合があります。ですから地図会社には法令が整備されています。印刷された地図をコピーし悪質な情報を付加して流布した場合、ケースによっては人権侵害事件として社会的に許されない行為と判断される場合が過去にも生起しています。「ゼンリン」社もそのような経験を複数回持ち、人権問題に関しては十分な知見を持っている会社であったはずと私は思っています。これだけ批判も多く、全国での意見書の採択も続いている社会問題に対して、グーグル社に、ストリート・ビュー・サービスに地図を供給しているゼンリン社の意見・感想・現状認識やコメントをぜひ聞かせてもらいたいものだと私は思います。 博物館が所蔵する古地図でもインターネットでの公開や出版に際して人権問題や個人のプライバシーに対する細心の留意がなされていると思います。そのような経過や人権への配慮に比較して、グーグル社が行なっているサービスへの疑問は大きくならざるを得ません。 経済産業省のコメント「国民が不安を感じるのは理解できるが、利便性も否定できない。規制で縛るのではなく、事業者に対して自主的な規律を求めていきたい」、相模原市議会の意見書「ビジネスや地域振興に大きな成果を生み出す可能性を秘めている」などには、私は下記のように思います。 科学技術の中には可能であるが商品化しない物も膨大に存在すると思います。たとえば、ロケットエンジン搭載や原子力で動く家庭用ファミリーカーなど・・・。 あまりにも、ぶしつけで、悪用や人権侵害の道具として、度重なる中央省庁からの改善の言葉に、市民や行政からの真摯な問掛け、意見に耳を貸さず一私企業の思惑でサービスを強引に展開してきたグーグル社の不遜な今日までの姿に、条例や法規制を求める動きは当然すぎるほど当然の成り行きだと私は思っています。 ニュージーランドなどの諸外国のメディアの報道の様子、被差別マイノリティとネット、ストリートビューに関する論考は次回に展開してみたいと考えています。 過去の連載はすべて下記のブログにも掲載しています。 「Googleストリートビューは問題だなぁ」 http://nostreet.exblog.jp/ ● ● ● 生活安全に関する意見書 国が推進する「u-Japan構想」を背景にインターネットの普及は著しく、市民生活に大きな恩恵をもたらしている。その一方では情報化社会のすき間をねらった犯罪がより多様化・巧妙化している現状がある。こうした中、情報管理のあり方を含め私たちは常に人権に配慮した活用を心がけながら、情報技術の発展を考えていかなければならない。 一例として、本年8月に運用が開始されたインターネットの地図検査サービス「グーグルマップ」は、2.5メートルの高さから周囲360度の上下の「風景」を見渡せる無料サービスであり、情報が掲載されている地域は国内のみならず世界の主要都市をいながらにして見渡すことができるようになっている。 遺憾ながら画像撮影に際しては、被写体となる地域や個人への事前告知も撮影許可も公開許可願もなくインターネット上に公開された。画像には、民家やその家庭の私物、車、敷地内の様子、通行人や自宅内にいる人の姿が写り込み、自動で不鮮明画像にされるとしていた人の顔が判別できるものや、車のナンバー、表札の文字が鮮明にわかるものも少なくない。こうした情報の流布は、空き巣、振り込め詐欺等の犯罪に悪用される危険性、児童・生徒の通学路や教育施設等の防犯上不安を生むとする声がある。 問題がある画像については利用者から申し出れば削除に応じているが、デジタルデバイドが顕在化する中、24時間世界じゅうに公開されているという事実が一般的に認識されていないのが現状となっている。 また、閲覧状態になることを知らずに利用者が自作マップに個人情報を書き込み、情報流出させる事例が相次いでおり、情報提供者側の対応が利用実態に追従できない状況となっている。 こうした対応のおくれはプライバシー・防犯上の課題を放置することにつながり、悪用された場合には日常の生活安全に対する不安が増すことになる。 海外では欧州連合がグーグルの「Street View」に懸念を表明するなどとし、非公開の国が多く、一部の国で観光地や大通りのみの公開にとどめるなどとしており、居住地域への影響のない配慮がなされている。アメリカ合衆国では既にプライバシー侵害の裁判も行われている。 よって狛江市議会は国会・政府及び東京都に対し、下記事項の実現を強く求めるものである。 記 1 当該サービスにつき国に寄せられた意見の実態調査を初め現状把握に努めること。 2 住居地域の公開の適否につき、適切な意見聴取の上、事業者に対する指導を徹底すること。 3 必要に応じ法整備を行うこと。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 平成20年(2008年)12月22日 東京都狛江市議会 内閣総理大臣 総務大臣 経済産業大臣 衆議院議長 様 参議院議長 東京都知事 ※ ※ ※ ●ストリートビュー問題 資料など 自治体可決意見書一覧(1) http://nostreet.exblog.jp/10335072/ <すぐ読んでみる> 自治体可決意見書一覧(2) http://nostreet.exblog.jp/10335103/ <すぐ読んでみる> 自治体可決意見書一覧(3) http://nostreet.exblog.jp/10398189/ <すぐ読んでみる> 40回目までの過去の連載内容の一覧 http://nostreet.exblog.jp/10564889/ <すぐ読んでみる> ※ ※ ※ この連載は「ジャーナリスト・ネット」にて連載中 http://www.journalist-net.com/ ぜひ上記「Jounalist-Net」もご訪問下さいませ♪ <ちょっと訪問してみる>
by hrosaka056
| 2008-12-25 01:57
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アバウト
「ジャーナリストネット」連載より了解を得て転載。当URLの紹介は歓迎です。最下部「前へ」「次へ」で、過去ページ。問題資料URLが多し。「子ども権利条約16条」など重要!!
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